就労移行支援・就労定着支援とは

今回は、障がいのある方の就労をバックアップする、就労移行支援と就労定着支援の二つについて解説をしていきます。
就労移行支援と就労定着支援は似た名前なので混同されがちですが、扱うサービスの内容は大きく異なります。

就労移行支援とは?
「就労移行支援」は、障がいがある方の就労をサポートする制度で、「障害者総合支援法」に基づく「訓練等給付」の一つです。これは、一般企業への就労を希望する、原則65歳未満の方が対象となります。就労移行支援は、訓練を通じて知識や能力を高め、実習や職場探しなどを通して、適性に合った職場への就労を目指すものです。

就労移行支援の主なサービス内容は多岐にわたります。具体的には、就職活動のサポート、就労に必要な知識や能力を向上させるための訓練、あん摩マッサージ指圧師などの特定の資格取得を目指す方への支援などが含まれます。支援は段階的に進められます。まず、初期段階では就職に必要な体力や集中力などの基礎能力を身につけるトレーニングを行います。次に、ビジネスマナー講習や職場見学、実習などを通じて、自分に合った職種や職場環境を見つける機会が提供されます。最後に、応募書類の作成や模擬面接といった就職支援が行われます。
就労移行支援は就職に向けた訓練のため、基本的に賃金は発生しません。サービスや訓練内容は事業所によって異なり、事務職のPCスキルや製造現場でのピッキング技術など、実践的なスキルを習得できる場所もあります。利用期間は原則2年間ですが、就職が難しい場合は市町村の承認を得て1年間の延長が可能です。承認が得られない場合でも、再申請することで再び2年間利用できるようになります。

就労移行支援の利用の仕方
就労移行支援の利用には、障がい支援区分や障害者手帳の所持は必須ではありません。しかし、事業所によっては障害者手帳が必要な場合もあります。利用を希望する事業所と事前に相談することが重要です。
利用の流れは以下の通りです。

  1. 希望する事業所を探す
  2. インターネットで探すこともできますし、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で紹介を受けることもできます。

  3. 市区町村の障害福祉課に利用申請
  4. 申請後は、窓口担当者による聞き取り調査やサービス支給認定のための会議を経て、支給が決定されます。サービス利用には「サービス等利用計画案」の提出が必要で、通常は指定特定相談支援事業者が作成しますが、自分で作成することも可能です。

  5. 利用決定

利用が正式に決まると、「障害福祉サービス受給者証(受給者証)」が発行されます。これは障害福祉サービスを受けるために必要な許可証で、障害者手帳とは別物です。受給者証には、氏名、住所、受給期間、受けられるサービスの種類などが記載されています。受給者証を事業所に持参し、契約を結ぶと、通所を開始できます。
なお、受給者証には有効期限があるため、定期的な更新が必要です。

就労定着支援とは?
「就労定着支援」は、就労移行支援や就労継続支援などを利用して一般企業に就職した障がいのある方を対象にした支援サービスです。就職後の生活面や仕事面で生じる課題に対し、相談や指導、アドバイスなどを行います。特に、就職後6ヶ月が経過した方が主な対象です。就労定着支援の事業所は、就労移行支援の事業所が兼務しているケースが多く見られます。就職後7ヶ月目から利用できるようになり、最長3年間利用可能です。
主なサービス内容は、利用者が仕事を継続できるように、就職先の会社や医療機関などと連携し、就業面、生活面、健康面の支援を行うことです。就労定着支援員が、利用者と勤め先の間に立って、必要な情報のやり取りや共有を仲介することもあります。また、日常生活や社会生活で課題に直面した際の相談や指導も行います。利用者からの希望があれば、支援員が本人や職場の上司と面談することもあります。就労定着支援は、一人で悩みを抱え込まないように、きめ細かなサポートを提供することで、離職を防ぐ役割を果たします。

就労定着支援の利用の仕方
就労定着支援の利用方法は、就労移行支援とほぼ同じです。障がい支援区分や障害者手帳の所持は必須ではありません。

利用の流れは、まず希望する事業所を探すか、就労移行支援を利用していた場合は同じ事業所で継続を希望します。就労移行支援事業所を利用して就職した場合、就職後の6ヶ月間はそれまで利用していた事業所から面談などのサポートを受けられ、7ヶ月目から同じ事業所による就労定着支援を正式に利用できます。もちろん、就職後に別の就労定着支援事業所を利用することも可能です。
いずれの場合も、市区町村の窓口で利用申請を行い、認定調査を受ける必要があります。その後、サービス等利用計画案を提出します。利用が正式に決定すると、受給者証が発行され、事業所との契約後にサービスを利用できるようになります。申請手続きの流れは自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。

就労移行支援・就労定着支援にかかる費用
就労移行支援と就労定着支援の利用料金は、利用者や配偶者の前年度の所得に応じて決まりますが、あらかじめ定められた負担上限月額以上の負担は生じません。この料金体系は共通です。
具体的には、

  • 生活保護世帯や市町村民税非課税世帯:負担上限月額が0円
  • 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満):負担上限月額は9,300円
  • これ以外の世帯の負担上限月額:37,200円

所得を判断する際の世帯の範囲は、18歳以上の障がいのある方は本人と配偶者、障がいのある子どもは保護者の属する世帯となります。

まとめ
就労移行支援と就労定着支援は、障がいのある方が就職前から就職後にかけて、安心して働けるようにサポートするサービスです。就職活動の悩みや不安、就職後のトラブルなど、専門スタッフが相談に乗ってくれます。体調管理や薬の服用に関する相談もできるため、新しい環境で働く際の心強いサポートとなります。