障害者総合支援法の成り立ち

はじめに:現代の障がい福祉を支える「障害者総合支援法」
現在の障がい福祉の根幹をなす「障害者総合支援法」。この法律は、戦後の福祉制度の始まりから、国際的な理念の受容といった長い歴史を経て成立しました。本稿では、その制定に至るまでの道のりを辿ります。

戦後から始まった日本の障がい福祉
日本の本格的な障がい福祉は戦後に始まります。基本的人権の尊重という理念のもと「生活保護法」「児童福祉法」「身体障害者福祉法」の福祉三法が成立し、公的支援の礎となりました。教育面では障がい児の教育機会が保障されたものの、障がいのない子とは別の場で学ぶ「分離教育」が基本であり、現代とは異なる考え方がとられていました。

転換期:ノーマライゼーションの理念との出会い
1970年代に入ると、世界では「ノーマライゼーション」の理念が潮流となります。これは「障がいのある人が、ない人と同様に地域で当たり前の生活を送る社会」を目指す考え方で、従来の「保護」中心の福祉観を大きく転換させるものでした。国連による1981年の「国際障害者年」などを通じ、この理念は日本の政策にも大きな影響を与え、社会に深く根付いていきました。

発展期:「措置」から「契約」へ、そして新たな課題
ノーマライゼーションの理念は制度改革を促します。行政が一方的にサービスを決める「措置制度」から、2003年、利用者が事業者と対等に「契約」を結ぶ「支援費制度」が開始。利用者本位への歴史的転換でしたが、障がい種別による縦割り等の課題は残りました。これを乗り越えるため、2005年にサービスを一元化した「障害者自立支援法」が制定されたのです。

「障害者総合支援法」の制定と更なる拡充
「障害者自立支援法」の利用者負担等の課題を受け、2013年に「障害者総合支援法」へと改正されました。大きな特徴は、共生社会の実現などを謳う「基本理念」が明記されたことです。さらに、
①難病等も対象とする範囲の拡大
②個々の特性をより適切に評価する「障害支援区分」への変更
③重度訪問介護の対象を重度の知的・精神障がい者にも拡大する
など、重要な改善がなされました。

まとめ
日本の障がい福祉は、戦後の「救済」から始まり、「ノーマライゼーション」の理念のもと、「措置」から「契約」へ、そして「自立」と「共生」へと姿を変えてきました。その結晶である「障害者総合支援法」は現在の福祉を支える柱です。この法律は3年ごとに見直され、時代に合わせて発展を続けます。共生社会の実現に向け、その成り立ちや理念に関心を持つことが、私たち一人ひとりの大切な第一歩です。