失業手当の受け取り方とその仕組み

失業手当は、雇用保険に定められている「失業等給付」の通称であり、失業中の生活不安を軽減し、求職者がスムーズに再就職できるように支援するための手当です。失業手当を受け取るための大前提として、離職時に雇用保険に加入している必要があります。

1. 受給資格の要件(被保険者期間)

失業手当の受給資格を得るには、雇用保険への加入期間(被保険者期間)が一定期間以上必要です。

自己都合による退職:離職日以前2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あること。
会社都合(倒産・解雇など)による退職:離職日以前1年間に、被保険者期間が6ヶ月以上あること。

自己都合退職の場合、1年未満の勤務でも、直前の2社での加入期間が合計12ヶ月以上であれば受給対象となる可能性があります。会社都合退職は、自己都合退職よりも短い期間で受給資格を得られるため、優遇されています。

2. 失業手当の給付額(日額)の計算

失業手当の1日あたりの支給額(日額)は、退職前にもらっていた給与に基づき計算され、賃金日額の5割〜8割が目安となります(60歳以上65歳未満は4割〜5割)。極端に月給が安かった人でも最低限の生活を維持できるよう8割が上限近くに設定され、月給が高かった人は5割程度の給付率となります。

計算の手順
1. 退職前6ヶ月間の給与総額を計算する。
2. 総額を180で割り、過去半年間の賃金日額を算出する。
3. 算出した賃金日額に給付率(40%〜80%)をかけた額が失業手当の日額となる。

注意点
失業手当の日額には年齢別の上限額が定められています。例えば、45歳以上60歳未満の場合、1日あたりの上限額は約8,400円です。在職中の給与が非常に高かったとしても、この上限額が適用されるため注意が必要です。

3. 失業手当の支給日数(所定給付日数)

失業手当を受給できる日数は「所定給付日数」と呼ばれ、雇用保険の加入期間と、退職理由(自己都合か会社都合か)によって決まります。

雇用保険加入期間 自己都合による退職(原則)
会社都合による退職(45歳以上60歳未満の例)
10年未満:90日 180日
10年以上20年未満:120日 240日
20年以上 : 150日 270日

自己都合退職の場合、加入期間が長くても最大150日ですが、会社都合退職の場合は、加入期間が短くても所定給付日数が優遇される傾向があります。

4. 失業手当の受給開始までの期間

失業手当は、離職後すぐに受給が開始されるわけではありません。退職理由によって、手当が支給されない期間が設けられています。

待期期間(共通)
ハローワークでの手続き(受給資格決定日)から7日間は「待期」期間となり、退職理由にかかわらず手当は支給されません。
給付制限期間(自己都合の場合):待期期間が満了した後、約3ヶ月間は「給付制限」期間となり、手当の支給が停止されます。これは、自己都合による退職が制度の趣旨に反することを防ぐための措置です。この制限は会社都合による退職では発生しません。

自己都合退職の場合、最初の支給が行われるのは、最短でも待期期間7日間+給付制限3ヶ月間を経過した後の第2回失業認定日(手続きから約3ヶ月+1〜3週間後)となります。

5. 失業手当取得までのスケジュール

失業手当を取得するまでの主なスケジュールは以下の通りです。

1. 離職票の取得:退職後、勤務していた会社から離職票が送られてきます(通常1週間程度)。
2. ハローワークで手続き:離職票が届いたら、できるだけ早く自宅を管轄するハローワークに行き、手続きを行います。この日が「受給資格決定日」となり、ここから7日間の待期期間が始まります。
3. 受給説明会に出席:手続き後、1〜2週間後に行われる受給説明会に出席し、制度の仕組みや書類の書き方などの説明を受けます。
4. 失業認定日に出席:最初の手続きから4週間後に設定されるのが第1回失業認定日です。求職活動の状況などを自己申告書類で報告します。
会社都合退職者:第1回認定日より支給が確定し、数日後に手当が振り込まれます。
自己都合退職者:給付制限期間満了後、第2回失業認定日に出席することで、最初の手当が振り込まれます。

6. 受給中のアルバイトについて

失業手当を受給している期間中でも、アルバイトが全く禁止されているわけではありません。

1. 給付制限期間中のアルバイト:自己都合退職の場合、待期満了後の約3ヶ月間の給付制限期間中は、手当が発生しないため、この期間内のアルバイトは法的に問題ありません。
2. 手当支給開始後のアルバイト:手当支給開始後にアルバイトをした場合、失業認定日にその収入を報告する必要があります。稼いだ分だけ手当の支給が不支給(先送り)となりますが、不支給分は消滅せず、所定給付日数以降に回されます。これにより、無収入となる期間を先延ばしにできるというメリットがあります。
3. 一定額以下の収入:アルバイトによる収入額が一定額以下であれば、手当が先送りされることなく、通常のスケジュールで支給される場合があります。家計補助を目的とした短時間の労働が認められる可能性があるため、詳細はハローワークに相談することが重要です。

突然の失業に備え、失業手当の給付スケジュールや仕組みを事前に理解しておくことが、落ち着いて再就職を目指すための鍵となります。