採用コラム
Column特例子会社の仕組みと障害者雇用
特例子会社とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、親会社が障害者雇用を促進し法定雇用率を達成する目的で設立された会社です。特例子会社として認定されるには、一定の要件を満たす必要があります。主な要件としては、親会社との人的・資本的な関係が密接であること、雇用する障害者が5人以上かつ全従業員の20%以上であること、そして障害者のための設備や専門の指導員を配置するなど、適切な雇用環境を整備していることなどが挙げられます。
特例子会社の安定的な経営には、親会社との協力が不可欠です。親会社が業務を継続的に委託し、積極的に関与することで、経営基盤が安定します。また、特例子会社自身も、親会社の支援に依存するだけでなく、業務の質を高めたり、新たな業務を提案したりといった経営努力が求められます。
障害者雇用を阻む課題と特例子会社のメリット
現在、多くの企業が法定雇用率の達成に苦慮しており、その背景には「採用困難」「教育困難」「仕事を作り出すことが困難」という3つの課題があります。
- 採用困難
- 教育困難
- 仕事を作り出すことが困難
多くの企業が軽度の身体障がい者を求めていますが、すでに就職している人が多いため、採用競争が激化しています。そのため、知的・精神障がい者など、多様な特性を持つ人々を積極的に雇用する意識変革が必要です。
障がいの特性に合わせた教育方法やコミュニケーションがわからず、雇用をためらう企業が多く存在します。個々の障がいに応じた支援体制の構築が求められます。
障害者雇用に前向きな企業でも、どのような業務を任せればよいかわからないという課題があります。特例子会社を含め、成功事例の情報が不足していることも原因の一つです。
特例子会社は、これらの課題を克服する有効な手段となり得ます。特例子会社として認定されることで、事業者と障害者双方にメリットが生まれます。
- 能力の最大限の発揮
- 高い定着率と生産性
- 設備投資の集中
- 柔軟な雇用管理
1.事業者側のメリット
障がいの特性に合わせた職場環境と業務を確保することで、従業員の能力を最大限に引き出せます。
働きやすい環境が整備されることで、従業員の定着率が向上し、結果として生産性の向上が期待できます。
設備投資を特例子会社に集中して行うことで、効率的な環境整備が可能になります。
親会社とは異なる雇用条件を設定でき、多様な働き方に対応できます。
2.障害者側のメリット
- 雇用の機会拡大
- 安心できる職場環境
特例子会社の設立自体が、雇用の機会を増やすことにつながります。
障がいに配慮された環境で、安心して能力を発揮しながら働けます。
特例子会社の雇用条件と実態
特例子会社は、一般企業の障害者雇用枠と同様に、障害者手帳を持つ方が対象です。特例子会社と一般企業の障害者雇用枠では、働き方や業務内容において障がいへの配慮がある点は共通しています。しかし、特例子会社は障害者への配慮に特化しているため、より手厚い設備や支援が期待できる一方で、一般企業に比べて健常者との交流機会が少なくなる可能性もあります。また、全国的に事業所数が限られているため、地域によっては通いづらいといった課題も存在します。
- 業種・職種・雇用形態
- 給与
2012年の調査報告書によると、特例子会社で最も多い業種はサービス業(清掃・ビルメンテナンスなど)で、次いで製造業、情報通信業が続きます。職種では事務職が最も多く、次いで運搬・清掃・包装などの職種が上位を占めています。雇用形態は、フルタイムの正社員が最も多く、次いでパートタイムが続きます。
特例子会社に勤務する従業員の平均年収は150万円から300万円未満が最も多く、全体の約6割を占めています。150万円未満が約25%、300万円以上400万円未満が約12%と続き、400万円以上はごくわずかです。給与形態は、欠勤や遅刻によって給与が控除される日給月給制が多く採用されています。
まとめ
少子高齢化が進む現代社会において、障害者雇用の拡大はますます重要になっています。特例子会社は、親会社の支援のもと、障害者が安心して働ける環境を専門的に整備する役割を担っており、その重要性は今後も高まっていくでしょう。
事業者にとっては、特例子会社の設立が法定雇用率の達成につながるだけでなく、障害者の能力を最大限に引き出し、生産性を高めるというメリットがあります。採用や教育、業務創出といった課題を乗り越えるためにも、特例子会社は有効な選択肢です。
一方で、就労を希望する障害者にとっては、特例子会社は障害の特性に配慮された環境で働く機会を提供してくれます。ただし、求人数や地域に偏りがあるため、就職を希望する際はハローワークや求人サイトなどを活用して、自分に合った求人情報を探すことが重要です。今後も法定雇用率の段階的な引き上げが予定されており、障害者雇用を取り巻く環境は変化し続けることが予想されます。企業も個人も、この変化に柔軟に対応していく姿勢が求められます。